香港市場に上場する「i シェアーズ・コアS&P BSE SENSEX インディア ETF(9836.HK)」をマザーファンドとして、実質的な負担(=信託報酬)は0.4638%程度となっています。
当然この信託報酬ならインド株式のカテゴリーで日本最安となるのですが、私には2つのサプライズがありました。
●米国ではなく香港市場に上場のETFをマザーとする投信!
ブラックロックの「i シェアーズ」と聞けば、東証上場ETFに該当しなければ米国ETFだろうと誤解する人が大半のように思いますが、このファンドは香港上場ETF一本をひたすら買い入れるファンドで多分日本初でしょう。
●ETF経費率を含んだ信託報酬率が0.4638%って本当なのか?
ただ安いから驚いたのではなく、実は私はこのETF(9836.HK)を日本の証券会社の中国株口座で保有していて、その経費率は0.64%と認識していたからです。
改めて調べてみるとブラックロックのホームページには「経費率:0.40%」と表記されているので、これに投信側で掛かる0.0638%を加えて実質的な負担が0.4638%に設定されているものと思われます。
しかしながら、公式の23年6月30日現在のファクトシートには「信託報酬(税抜)0.64%」と表記され、これは私の認識と一致します。
推測するに、ファクトシートは過去の情報がアップデートされていないだけで数年前は確かに経費率0.64%だったが、近年のうちに0.40%に値下げされたと見るのが自然かと!?
値下げしたならグッドニュースでおそらく世界中のインドETFで経費率0.40%に対抗できるものはないのだからアピールすればいいのに公表された形跡もありませんね。
値下げ自体は良いことですが、このような基本情報すら錯綜してタイムリーに得られないことが日本や米国と違い、香港ETFのリスクであることは指摘しておきたい!
せっかく私がこのETFを保有しているので、
・自分で香港市場にて「i シェアーズ・コアS&P BSE SENSEX インディア ETF(9836.HK)」を買い付ける場合と、
・日本で「SBI・i シェアーズ・インド株式インデックス・ファンド」を投信で買う場合で
コスト的にどちらが有利かを簡単に比較してみましょう。
ETFの経費率0.40%はどちらでも等しく発生するので差異なし。
先ずは為替手数料を無視して、往復の株式売買手数料と投信側の上乗せ信託報酬を比較します。
マネックス証券の手数料を例に取りますが(大手ネット証券なら同一と思います)、約定金額に対して税込0.275%で設定されているので往復では税込0.55%ですね。
これに対して、投信はETFの経費以外で年間0.0638%の信託報酬が発生するので8.6年保有でほぼ同等、9年以上保有するならETF直接買い付けよりコスト的に不利になります。
(その他経費が膨らめば更に投信の有利年数は短くなりますが不明なのでここでは考慮しません。)
ザックリ10年保有を考えるなら投信はやめて中国株口座でインド株ETF(9836.HK)を買う方が良いでしょう・・と導けますが、話はそう簡単ではありません。
香港ドルは為替手数料が高く片道15銭に設定されているので、1HKドル=18円として手数料率は片道0.83%で往復では1.66%になります。
では、投信の方は為替手数料がどの程度になるのかと言えば不明です。
流動性が高く低コストのドル円なら無視しても良い程度だと思いますが、香港ドルを買い付ける場合は無視できないのかも知れませんが、不明なので一旦無視して掛からないものとします。
まず日本円から香港ドルに変えてETFを購入後売却して香港ドルを日本円に戻す場合には、(取引)0.55%+(為替)1.66%=2.21%のコストが掛かると想定します。
対して投信購入の場合は年間0.0638%の信託報酬のみ掛かると仮定すると、なんと34.6年後にETF直接購入とほぼ同等のコストとなり、35年以上保有ならETF直接購入の方が有利という計算になります!
私も中国株口座に香港ドル資金があったからインド株ETF(9836.HK)を購入しましたが、わざわざ日本円を為替手数料払って香港ドルに変えてまで購入する気はなく別の手段を選びますね。
この投信が香港ドルの為替手数料を無視できるほど低く抑えられるならETF直接購入より非常に有利になると思いますが、それも含めて運用後はしばらく様子見姿勢で打診買い程度に留めておいた方が良いような。
米国ETFよりも「その他経費」が香港市場特有で多く掛かってしまう可能性もありますしね。
米国ETFほど流動性が高い訳でもなくETF償還のリスクも心配しなくて良いとは言えませんね。
このETFを保有している立場からは、SBIのiシェアーズ投信が設定されたということはブラックロックもこのETFを軽視している訳ではなく、本邦投資家から投信経由でこのETFに資金流入が続けば償還リスクは益々小さくなるので大歓迎です。
NISA成長投資枠の対象になれば(ならない理由もないとは思いますが)簡単に償還する訳にも行かなくなるでしょう。
ということで、世界最安のインド株ETF一本を香港市場でひたすら買い付ける投信で非常に興味深いのですが、不明点も多く運用開始後1年経って様々な確認をしてから本格的に購入しても遅くはないかなと思います。
SBIアセットマネジメントもSBI証券における「iFreeNEXT インド株インデックス」のバカ売れぶりを見て、香港市場のインド株ETFでもいいから信託報酬で下回る投信を作ってしまえと出して来たのかも知れませんが、競争は大歓迎!新たな試みを評価します!
