国内上場の海外連動ETFのリスク顕在化か?
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野村アセットマネジメントは15日、通貨連動型の上場投資信託(ETF)3本の上場廃止を申請すると発表した。2008年9月に大阪証券取引所に上場した、ブラジルレアル、インドルピー、ロシアルーブルに連動するETF。上場時に30億円程度あった純資産残高が3億~5億円まで減少、運用を続けることが難しくなった。上場廃止は2010年2月中旬の見込み。(日経より)
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こんなの売れるのかと当時も書いた記憶がありますが、ニッチな新興国通貨連動型ETFを3本も上場しておいて、1年ちょっとで売れへんから止めますわって話です。
今の上場廃止基準では出来高や流動性は問われないので、廃止理由については野村側の判断で、資産残高減により今後指数との連動性が保たれなくなるからだそうです。
しかし、ニッチとは言ってもブラジルレアルなら野村の投資信託は飛ぶように売れています。何百億なんて集めるのは当たり前です。
一方、ブラジル通貨レアル連動型ETF(1341)の純資産残高はたったの4億円です!
恐らく、ブラジルレアルの投資信託を喜んで買っている方々は、似たようなETFを野村が出していることなんて全く知らないのでしょう。
通貨連動なんてニッチ商品だから廃止されるのだと他人事ではいられないかも知れません。
野村AMは新興国株ETFも多く出してくれているので、純資産価額を確認しておきましょう。
上海連動ETF(1309) :336億円
ブラジル株ETF(1325) :166億円
インド株ETF(1678) : 23億円
ロシア株ETF(1324) : 22億円
南アフリカ株ETF(1323): 14億円 [12月15日現在]
インドは上場後間もないので今後増えるでしょうが、ロシアと特に南アは通貨連動ETFのたかが3~5倍の規模しかありません。
野村は今回通貨連動対象の3カ国の株価指数連動ETFについては上場廃止の予定はなく売買は継続されると明言しています。
(裏を読めば南ア株ETFには言及していないのですが、それは上海も同じだから裏の読み過ぎか?)
野村が発表している今回の通貨連動ETFの廃止理由をよく読むと、
「指標連動有価証券にのみ投資を行い対象指標に連動する投資成果を目指す」のが本来だが、
「現在の純資産総額の状況では有価証券への新たな投資が非常に困難な状況」となり、
「対象指標に連動させる運用が今後行えなくなると判断した」ので上場廃止を申請したと言っています。
通貨連動だから特別な事情があるとは思えず、現物ではなく株価指数連動のリンク債に投資している株価指数連動ETF(ETN)も同じ条件であると思われます。
ということは、南アETFもロシアETFも上場廃止のリスクは考えておくべきなのかも知れません。
私はこの中で純資産価額が大きめの上海ETFとブラジルETFを持っていますが、これらまで廃止されるような事態になれば国内上場の新興国株ETFは全滅となるでしょう。
近い将来でそのリスクを考える必要はないかも知れませんが、ワーストケースは想定しておきたいものです。
今回の通貨連動型ETFの場合は、
●2月上旬で対象指数との連動が停止されることを約2カ月前に発表している
●取引所にて上場廃止が決まると、整理銘柄に指定されて原則1カ月後に上場廃止となる
(この間、通常の売買が可能でかつ指数ともある程度連動しているはず。)
●上場廃止後の換金手段は野村証券株式会社での買い取りのみ。
(具体的にどうやるのかわかりませんが、何らかの理由で売りそびれても上場廃止後でも換金は可能なようだ。)
ということで、万が一自分の持っているETFが上場廃止になっても基本的には売れば良いだけだと私は割と楽観的に考えています。
当然超長期バイ&ホールド派で損失も利益も実現したくない方は、私よりもこのリスクは大きく捉えるべきでしょう。
でも、上海やブラジルETFの資産残高も投資信託の規模に比べればゴミなんですよね。
●あまりにニッチ過ぎた通貨連動型という商品をホイホイ投入して駄目なら引っ込める運用会社の姿勢
●でも、人気のブラジルレアルでさえ資金が集まらず、高コストの投資信託しか見えていない本邦投資家の姿勢
●投信拡販にとってETFを邪魔な存在としか捉えない証券会社の姿勢
今回の上場廃止には、様々な問題が凝縮されているように思います。
リスクは認識した上で、国内ETFを上手に自己責任で使いましょう!
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