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  • 【書評】「黄金の扉を開ける賢者の海外投資術」橘玲著 | 経済的自由の実践投資備忘録

    【書評】「黄金の扉を開ける賢者の海外投資術」橘玲著

    「海外投資を楽しむ会」創設メンバーの橘玲氏の著作です。
    氏の著作はいつも切り口が斬新である。
     
    私の感想は、投資の実践書かと問われればNo、単なる楽しい読み物かと問われればそれもNo、その中間にある本だと思います。
     

     
    インターネットがWeb2.0をもたらすのなら、今後金融2.0と呼ぶべき変化も起こるはずで、言語・法律・国境などの障壁から自由でグローバルな存在になる金融革命をいち早く予感したものが黄金の扉を開けると説く。
     
    章の構成は、
    序章:さよなら、プライベートバンカー
    1章:究極の投資 vs 至高の投資
    2章:誰もがジム・ロジャーズになれる日
    3章:ミセス・ワタナベの冒険
    4章:革命としてのヘッジファンド
    5章:タックスヘイブンの理想と現実
    6章:人生設計としての海外投資
    終章:億万長者になるなんて簡単だ
     
    となっているが、微妙に繋がっているようでもあり、面白い短編集のような印象でもあり。
     


    私なりにざっくり要約してしまうと、
     
    富裕層だけが高い手数料で利用できたプライベートバンクやヘッジファンドと同じ事を、零細個人投資家が安い手数料で自分で出来る環境になってきた。
    ほら、零細個人投資家でもこんなサービス(ETF・ADR・FX・オプション等)をこう使えばここまでオルタナティブ投資(買いも売りも駆使する)が出来るよ。
    黄金の扉を開けて、ジムのように好きな国で口座を作って投資しても良いし、経済的自由を手にして海外に移住するのも自由だよ。そういう時代だよ。
     
    となります。
     
    しかしながら、書かれている内容は実践的な方法というよりも、こんな事も可能なんだというアイデアと捉えた方が良いと思います。
     
    例えば、「ミセス・ワタナベの冒険」の章に40万円で一生遊んで暮らす方法が書かれている。
     
    米ドルが1ドル120円で金利5%と仮定すると、
    40万円を担保にレバレッジ300倍で1億2000万円を借りて100万ドルをホールドすれば、年間600万円(5万ドル)の利息を貰うことができると説明されている。
     
    勿論これは現実には成立しないし、著者が良いと考えている訳でもない極端な例を挙げているのだが、初心者には誤解を与えかねない。
     
    これは不可能ではないが条件は、一生の底で神技的にレバ300でロングして、かつ金利差が一生維持される場合だけであるのは言うまでもないが、この本では詳しく説明されていない。
     
    宝くじに40万円を全部突っ込んで3億当たりますようにと願うのと、どちらの確率が高いかは私にはわからない!?
     
    この説明の後に、購買力平価説と金利裁定により結局はスワップ金利を含めてゼロサム、つまり、金利差を取りに行ったところでその分の為替差損が生じるので実は意味がないとも説明されている。
    (あくまで購買力平価説の立場に立てば・・です。)
     
    しかし、この後の展開が氏の真骨頂でありギクリとさせられた。
     
    このようなおとぎ話の夢のような未来は日本の低金利と円安が永遠に続くことで実現されるが、そのためには、
    「長い不況が襲い」「改革は遅々として進まず」「巨額財政赤字は更に拡大し」「格差増大による社会不安定」「株も不動産も大幅下落」する社会がユートピアを実現する。
    「こうして賢明な有権者は意図的に無能な政治家を為政者に選ぶようになるだろう。」と述べている・・。
     
    素晴らしい皮肉である!(皮肉と受け取るのは私がひねくれているからか?)
     
    私の翻訳ではこうなる。
    自覚のない「賢明」な有権者が多い国では無能な政治家が選ばれ国は衰退し、キャリートレードという受動的な理由による虚構の通貨安が、いつの間にか積極的な「売り」を理由とする真の安定的で強固な通貨安に取って代わり、ミセス・ワタナベは勝利する可能性がある・・。(ミセス・ワタナベには私を含みます)
     
    3章だけを説明しましたが、このようにある程度の知識がないと誤解するような記述も多いし、氏が言うような現地口座の開設も資金力があって(投資にも海外事情にも)熟練した投資家の一部が行うことでしょう。
     
    しかしながら、日本に居ながらインターネットで零細投資家にも開かれた扉は多いし、今後も益々開かれていくと思います。
     
    日本という金融後進国で、大手証券の店頭や営業マン経由で高手数料・限定商品しか取引しない人達との格差は拡がっていくでしょう。
     
    この本は読み物として楽しく読めるし、氏の独自の切り口とアイデアの豊富さと読ませる文章力は期待を裏切りません。
     
    我々も扉が開くのを待つ受身の投資家ではなく、自ら探して開ける主体的な投資家を目指しましょう!
     
     
    評価:★★★★☆(星4つ)
     
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