金融所得の国民健康保険料への反映は実現可能?いつ?

税制

もう止められない国保への金融所得反映?

自民党と維新の会が連立合意書に「金融所得の反映など応能負担の徹底」と明記して盛り込んだ社会保障制度改革に関して、12日の実務者会合で金融所得を反映させる仕組みを検討することで一致しました。
いつから金融所得を国保に反映するという話はまだ出ていませんが(今言える筈がない)、立憲民主党も賛成しているし、この方向性を巻き戻すことは難しいでしょうね。
この件に関しては金融所得増税も含めて書きたいことは沢山あるのですが、今回はこの仕組みが永田町の机上の空論ではなく、実務レベルで本当に可能なのか?いつから出来るのか?に絞って書きます。

以前の線表は28年までに可否判断してその後実施

この話は維新から今回突然出て来た訳ではなく、既に自民党内では「医療・介護保険における金融所得の勘案に関するプロジェクトチーム」が作られて、24年4月時点で「28年度までに可否の検討を進める」という割と悠長なタイムスケジュールでした。

維新は今回、年内に一定の方向性をまとめた上で来年の通常国会に法案を提出して制度化するよう求めています。

では、具体的にどうやって金融所得を反映させるの?って話は、厚労省の上野大臣が会見で言及しています。

社会保険関係法令で(国民ではなく事業者に)提出義務を課すことが必要
税制における金融所得の法定調書を活用する方式を前提にして検討
法定調書提出のオンライン化や法定調書へのマイナンバー記載を確実にする必要
法定調書情報を広域連合や市町村と共有し、オンライン化する必要
こうしたシステムを作っていくことが必要なので、一定の時間がかかる

私の理解でザックリ言えばこうなります。
税務署は申告ありなしにかかわらず、全国民の金融所得を把握できているのだから、同じ情報を貰えば自治体だってやれば出来るでしょ!
把握できれば申告なし分を自治体で国保料の算定対象に加えてやればいいだけなんだから簡単でしょ!
そりゃ紙ベースの手作業では担当者が連日徹夜したって回らないから、オンライン化してマイナンバーに紐づけて自動集計するシステムを構築してあげるから、後は各自治体の担当者が気合いで頑張れ!

机上の空論ではとても簡単に出来るかのように思わされますが、本当にそうでしょうか?

申告なし分の集計は結局手作業で負荷甚大?

システムで自動集計した金融所得総計を確定申告分に足し込むだけなら容易に思えますが、
確定申告の金融所得を全て無視してゼロに書き換えた上でシステムの総計を足し込むか?
システムから未申告分だけを集計して確定申告の所得に足し込むか?
のどちらかが必要になりますね。
後者は自治体の担当者が目で確認して手作業で集計する必要が出て来るし、前者は中身も確認せずにこんな計算して信頼に足るのか?という問題があります。
証券会社ごとの特定口座だけなら手作業で対応できても、方式によっては個別銘柄ごとに申告する・しないを選べる配当金を100銘柄以上持っているような人の申告所得を自治体の担当者が目で確認して手作業集計なんて本当に鬼の所業で机上の空論ですよ。

登録配当金受領口座方式の場合には金融所得の補足すら困難?

配当金の受領で「登録配当金受領口座方式」を選ぶと銀行への振込となり特定口座には反映されません。
私も詳しくはありませんが、この場合は証券会社を経由しないので証券会社は配当金額の把握すらしていないのでは?
税金は源泉徴収されているので、税務署も把握できなくても問題はありません。(申告があれば情報は納税者に求めればいい)
配当金を払う企業、あるいは振込を代行する信託銀行が、数百円レベルの配当金も含めて正確に全てマイナンバーに紐づけた上で国保料算定のためだけにオンライン法定調書を提出することが可能なのでしょうか?

可能だとしても、その後に自治体の担当者は市民一人ひとりの銘柄ごとに確定申告あり・なしをチェックして集計し直す苦行が待っているのかも知れません!?

実施までには相当な時間を要すし、そもそも実務レベルで可能?

上記は一例ですが、算定対象に加えればいいだけのキレイな1つの数字を算出してくれる魔法のシステムを構築し実務レベルで現実的な運用を行うには相当な時間を要して、数年内に実現可能だとはとても思えません。
少なくとも来年の国会に法案を通しても再来年から実施とか99.999%不可能だと思います。その翌年実施も99%不可能!(と予想)

そもそも永田町や霞が関が理屈の上では可能と考えた「絵に描いた餅」を時間かけてシステム化すれば、本当に各市町村で負荷なく正しく国保料に金融所得の反映を半自動で実現可能なのでしょうか?

もうお手並拝見しながら、投資家は詭弁の「公平」に対処する他ありませんが、よくわからない「公平」とか金融所得増税との絡みについてはまた別途書きます。

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