年収の壁103万円を引き上げるという話は基礎控除を+10万円、給与所得控除を+10万円引き上げて123万円にすることで税制改正大綱に盛り込まれました。
国民民主党が納得しないので自公が年収別に基礎控除額を変える修正案を出したので複雑怪奇な税制になりそうです。
万人に共通だから基礎控除だろと突っ込みたいところですが置いておいて、これで決まる可能性は極めて高いものの参議院で審議中でもあるので、今回はこの案に対して基礎控除上乗せ分を投資家が活用できるのかという観点で軽く淡々と書いてみます。
年収200万円超の場合は基礎控除上乗せが2年の時限措置というゴマカシに過ぎないので無視します。
年収200万円以下の場合は恒久措置で基礎控除に更に+37万円を上乗せすることで年収の壁が160万円になります。
単純に基礎控除額だけを見た場合は現状の48万円に+47万円(原案10万円+修正案37万円)の上乗せとなるので基礎控除額が95万円まで引き上がることになります。
一見大きく見えますが減税額を抑え込むカラクリがあり住民税の控除額は一切引き上げられず所得税のみに適用されます。(給与所得控除の10万円引上げは住民税にも適用)
つまり、年収160万円までの課税額が15%(所得税5%+住民税10%)から10%(住民税のみ)に引き下げられるだけで非課税にはなりません。
国保加入者は国民健康保険料の控除額も一切変わらないことに注意すべきでしょう。
これらを踏まえて基礎控除を分離課税の株式譲渡所得に充てた場合の減税額を考えてみます。
(総合課税の所得があればそちらで基礎控除を使うのが優先なので自分の意志では選べないことには注意)
株式譲渡所得が48万円超の部分はこれまで申告しても還付にはなりませんでしたが、今後は95万円まで基礎控除を充てることが可能になります。(総合課税の所得がない場合)
特定口座の譲渡所得48万円超95万円までの47万円分を申告する場合を考えてみます。
源泉徴収された課税額は47万円x20.315%=約9.5万円ですね。
これを申告した場合には所得税が非課税になるので47万円x15.315%=約7.2万円の還付になる筈。
差し引き2.3万円分が住民税5%分の納税額(源泉徴収済)に相当します。
所得税の分離課税15.315%が総合課税5%より3倍高いので減税額も3倍大きくなり効果が高くなることがミソです。
言い換えれば、基礎控除引き上げにより譲渡所得48万円超95万円未満の部分は課税率を20.315%から5%まで15%も下げることが可能になりそうです。
(総合課税なら15%が10%に下がるだけ)
基礎控除引き上げによる減税額は上述の通り最大で7.2万円の恩恵があるので大きいのは確かです。
しかしながら、国保加入者の場合は申告所得を増やせば保険料(税)がアップして相殺されることには注意。
保険料(税)率を少なめに10%で見積もっても47万円x10%=4.7万円の保険料アップになるので、第二の税金まで含めた減税額は2.5万円に過ぎません。
言い換えれば、20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税率を約15%(住民税5%+国保約10%)に下げる効果しかありません。
ということで、基礎控除引き上げは株式譲渡所得に充てる場合でもあまり美味しい話にはならないと思います。
会社の健保に入りつつ給与所得控除で給与所得が全て消えて基礎控除を全て分離課税に回せるというレアケース(作為的にこういう形を作ることを含めて一定層はいますね)なら「株式譲渡所得課税5%化」を有効活用できそうには思いますが、詳細判明後にまた掘り下げてみたいと思います。
2025年03月19日
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