金融庁のホームページで正式に令和8年度税制改正要望が公表されました。(→金融庁公式版PDF)
既に報道ではNISA拡充策と暗号資産課税に関する要望が先出しされていましたが、例によって断片的で不明点多数なので、一次ソースを確認してからと思ったのですが、結論から言うと報道された以上の詳細内容は記載されていませんね。
NISA要望事項もA4横スライド1枚に概要のみと非常にザックリとした内容です。
では、金融庁の要望の中から関心が高いと思われるNISAと暗号資産に関する内容だけ拾ってみます。
◆ NISA対象商品の拡充を含む制度の充実
【要望事項】
あらゆる世代が自身のライフプランに沿った形で資産形成を行えるよう、対象商品の拡充を含め、NISAの一層の充実のための措置を講ずること。
要望項目概要
① こども支援の一環としての、つみたて投資枠における対象年齢等の見直し
② 様々な資産運用ニーズに応えるための、対象商品の拡充等
③ 投資商品の入替をしやすくするための、非課税保有限度額の当年中の復活
本当に内容的にはこれだけです!
②と③についてはシルバー優遇の「プラチナNISA」とも言われていた内容だと思いますが、やはり現行NISAの外枠で新設ではなく内枠に過ぎず、かつ金融庁の要望はシルバー世代特化ではなくNISA制度共通で全世代向けに拡充することでシルバー世代のニーズにも応える形にしたいようですね。
②の中でこれまで排除していた毎月分配型投信も含めるようにして、③の中で老後に保守的なポートフォリオにスイッチングすることも可能なように対応するのでしょう。
スイッチングのニーズはシルバー世代特有のものではなく20代でも30代でも様々な理由で変更はOKとするのでしょう。
但し、「復活するのは簿価」が不変であれば、評価額がある程度膨らんでしまうと一度でも売ればNISA枠が簿価に縮んでしまうことには変わらず、これが結局はスイッチングを妨げる要因になります。
iDeCoは出口の太ったところでタンマリ課税すればいいから途中は時価でスイッチングさせてくれますが、NISAではあくまで「簿価」が復活するだけであることは変わらないのではないかと思いますが、要確認ですね。
それと①については報道されていた通りですが、私はつみたて枠600万円分だけが未成年でも使えるようになると思っていましたが、金融庁があたかも「つみたて枠」で1800万円分あるかのようなゴマカシの表を載せていることが気になります。
金融庁は以前からこのゴマカシ表を使うのですが、NISA(限度額1800万円)の主軸は(どこにも決定された事実はありませんが)あくまで「つみたて枠」であって、「成長投資枠」は内数として限度額1200万円分付与されているが、つみたて枠は最大1800万円分あるように見せるアノ表です!?
これはあくまで「成長投資枠」を自主的に「つみたて枠」同様に使えば、自主的積立枠が1800万円分になるという特殊事例に過ぎず、「つみたて枠」の限度額はあくまで600万円なのにそれを明記しない不思議なアノ表です!?
アノ表をスライドに載せてまるで「つみたて枠」自体の限度額が1800万円あるかのように見せかけているので、金融庁には財務省や永田町も騙しつつ未成年に付与する「つみたて枠」を1800万円で黙って押し通したい意図があるように思えます!?
コメントは控えますが、やりたいならセコセコ姑息ではなくちゃんと議論して通さないと駄目ですよね。
未成年限定で「成長投資枠」を付与しない代わりに「つみたて枠」を3倍の1800万円に拡大する特別優遇を通したいのならば。
どさくさで制度の理解が足りない人達を騙しで押し通せばいいって程の軽微案件ではありませんね。
◆ 暗号資産取引に係る課税の見直し
【要望事項】
暗号資産取引に係る必要な法整備と併せて、分離課税の導入を含めた暗号資産取引等に係る課税の見直しを行うこと。
また、【現状及び問題点】の中で「我が国でも暗号資産ETFの組成を可能とするための検討を税制面を含めて行う必要」
が指摘されています。
おそらくは暗号資産ETFを認める前に暗号資産取引全般の分離課税化が先でしょうね。
スケジュールも何も明示されていないので何年先になるのかはわかりませんが。
これらはあくまで金融庁の要望ですし、今年は特に要望が具体化されていなので決まるまで紆余曲折がありそうですね。
「プラチナNISA」を唱えていた岸田前首相率いる自民党議連も金融庁とどれだけ擦り合わせたのか?
金融庁要望では政治家ニーズによる高齢者配慮の原型を留めつつも「プラチナ」はどこにも見当たらずかなり削られ曲げられてしまったことに納得しているのかもわかりません。
今後の議論を見守りましょう。
金融庁の令和8年度税制改正要望で注目はNISA拡充と暗号資産課税見直し
