知る人は知っている米国の金融学の教授でインターネットバブル崩壊を予見したことでも有名なシーゲルさん。(私は詳しくありません)
投資家がリターンを向上させる為に当たり前のように取る行動が実は低いリターンしかもたらさないことを統計データから検証してバッサリと斬っています。
シーゲル氏のみならず、米国では学者が真面目に市場(相場)を研究して一般人でも読める難しすぎない書籍を執筆することが当たり前のように行われていますが、日本とは雲泥の差を感じざるを得ません。
私の勉強不足かも知れませんが、日本の学者さんで市場を真面目に科学する方がいるのでしょうか?
こういう部分も、日本では投資=ギャンブルと考える割合が多いことに繋がっているのではないかと思いますが、・・・本題です。
以下の問いにあなたはYesでしょうか?
●技術革新を先導する新興企業に投資すれば高リターンを得られる
●ハイテクなどの成長する業界に投資すれば高リターンを得られる
●IPO投資は儲かる
●配当の高い企業はリターンが低いので避ける
これらの当たり前と思いがちで取ってしまう投資行動を氏は痛快なまでに統計データで否定します。
氏は詳細にアカデミックに解説してくれますが、私の解釈でまとめると、
確かにマイクロソフトやヤフーのような技術革新の勝者に早い段階で投資できればハイリターンをもたらしてくれたはずだが、これは宝くじです。
敗者も含めて平均リターンを見れば、これらの企業や業界は市場平均にも及ばない。
何故なら、これらの企業や業界は概して過剰に期待されて株価が高すぎるから。
株価は増益率だけで決まるのではなく、それに対する投資家の期待を上回らなければ上昇しないが、投資家は後者を忘れがちである。
IPOも同様に初値だけでなく公募価格でも高すぎるので平均的には中長期で低リターンしかもたらさない。(もしIPOに当たったらさっさと売るべし)
1957年以降でS&P500銘柄のうち長期的に高リターンをもたらした1位はフィリップ・モリス(たばこ会社)の年19.75%であり、上位には生活必需品や医薬品で地味だけど名を知られた企業名が並ぶ。(理由の1つはハイテクのように期待も高くないから)
配当の高い企業は、大きな成長が見込めない成熟産業に多いこと、利益を設備投資に廻していないことを意味する、キャピタルゲインが小さいので配当を高くして株主を繋ぎとめている、などと見られがちだが、実は市場の平均リターンを上回っている。
また、配当の高い企業は本当に払える金を持っていることを意味するので、当てにならない決算の数字より信用できる!?
株価の上昇は低配当の企業より小さいとしても、株価下落時に高配当企業は株をより多く買い増しできるので(株価は下がっても配当はあまり下がらないので)、その後の上昇局面で低配当株よりリターンが上回ることになる。
これらから「ダウの犬」戦略が出てくるのですが、詳細は本を読むか検索して下さい。
この本には更に「株式投資の未来」というタイトルの大事なテーマがあります。
米国を始め先進国が高齢化していく中で、
①経済成長が維持されなくなり、
②株の売り手(現金化して生活資金を得る高齢者)は増えるが買い手(可処分所得も減る現役層)が減り、
これまでの右肩上がりの株価上昇は成り立たなくなるのではないかという疑念・・。
これに対して氏は、
●先進国に代わって新興国が成長することで世界経済の成長は維持され、
●先進国の多国籍企業にとっても世界のパイは増え続け、
●新興国が先進国の生産力減少を補って供給役を果たし、
●若い新興国の経済力をつけた人達が先進国の資産の買い手となるので、
「株式投資の未来」は明るいと説きます。
少し楽観的過ぎる感はありますが、新興国の成長が先進国の株価にとってもクッション役になることには賛成します。
また、氏はだからと言って新興国に投資することが高リターンをもたらすと考えるのは間違いであると、92年~03年の高成長期の中国がマイナスのリターンであったことを示してハイテク株と同様に期待され過ぎだからと説明します。
それなら私は大間違いをしていることになるのですが、それ以降の中国株の上昇は凄いことになっていますし、リーマンショックでバブルも剥げ落ちましたし今後はどうなのでしょう?
この本は学者さんが調査した結果と考察を学術的過ぎずにわかりやすく解説してくれる本で読みやすいと思います。
100万円を1年で手っ取り早く1億円にしようというバカ本が好きな方にはお勧めしませんが(!?)、日本人にありがちな他人の意見を言い直しているだけのオリジナリティのない本ではなく、学者によるオリジナリティのある傑出した良書の1つだと思います。
評価:★★★★★(星5つ!)
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コメント
こんばんわ
先週は徒然なるまま九州全県をふらふら旅をしてきました。
外から日本を見るのもすばらしいことですが、国内のすばらしさと自らの不明を思い知らされました。
特に印象的だったのは旧鍋島藩の佐賀、長崎佐世保でした。
佐世保では、丘陵地弓張の丘から夕日に沈む九十九島諸島が眼下に。夜が更けると佐世保市街地内にまばゆいオレンジ色の広大な一角がーー、米軍基地でした。
昼と夜とのコントラストが妙に印象に残った佐世保等々、九州の懐の深さ、歴史文化の豊富さを学習した五日間でした。
ウィズダム・ツリー・インベストメントの
上級戦略アドバイザー、シーゲル博士。興味ありますね。長期投資の権化程度しか知りません。早速著書を取り寄せよーっと。
九州全県制覇ですか、良いですね~。
私も九州には馴染みが薄いので行ってみたいですね。
シーゲル博士のような学者が市場に対して肯定的で積極的な関与・発言をすることで、世間の投資は恐ろしいものという誤解も解けていくと思うのですが・・。
日本では外人さんの学者に耳を傾けるほかないことが寂しいですね・・。