基礎控除アップ分は譲渡所得にも適用可
前回の配当編に続いて、年収の壁160万円で引き上げられた基礎控除分を株式(投信)譲渡所得に適用して金融課税5%化する方法を考えてみます。
基本的に配当所得を分離課税で申告する場合と同じで節税額も考え方も条件も変わりません。
但し、譲渡所得の場合は年内の益出し損出しで税額の調整が可能であり、金融課税5%ゾーンをどう使うかによって調整プランも変わって来ます。
また、長期保有の場合にわざわざ5%の税金を払って益出しする意味やメリットがあるのかも検証します。
既に年収の壁を越える確定利益がある場合はしゃぶるべし!
株式取引の頻度が高めで毎年それなりの規模で損益のある人は、そこに金融課税5%ゾーンを充てるか否かを決めるだけですね。
仮に金融所得以外の所得と配当所得の合計が住民税非課税枠(+各種控除内)で収まるなら、金融課税5%ゾーン(所得52万円分)は全て譲渡所得に充てられます。
この場合は申告することにより、源泉徴収済の所得税(15%分)最大7万8千円が還付されます。
(復興特別税0.315%分も含めると本当は最大8万円弱ですけどね。)
国保加入者の場合も配当所得と考え方や条件に違いはありません。
非加入者なら何百万円の譲渡所得を申告しても金融課税5%ゾーン分の所得税還付15%分のみ享受できますが、加入者は国保料アップ分が減税額を軽く上回ってしまうので口座を分けて申告所得を年収の壁手前で止める等の工夫が必要になって来ます。
但し、これは従来と申告所得のハードルバー高さが変わるだけなので、やっている人はこれまでも工夫してやっていることだと思います。
国保加入者であっても基本は配当同様に金融課税5%ゾーンをしゃぶり尽くした方がトクですね。
長期保有でも益出し再購入で金融課税5%ゾーンを使うべきか?
問題は、株式投信(ETF)長期保有の場合にわざわざ益出しで自ら毎年税金取られに行き買い直すほどのトクが金融課税5%ゾーンにあるのか?ということ。
このケースだともう宗教のように、複利の神を前にして売ってはならない!課税は繰り延べホールドこそが絶対真理で正義でトク!目先の節税に負ける奴はバイアンドホールド教義に反する裏切り者だ!
とか他人に説教始める教祖か何かのつもりの人が現れるかも知れませんが(そこまでは言ってない!)、複利も属する算数だけが真理であり正義です!
固定観念や無意味な信仰や間違った念仏に縛られるのはやめて算数をちゃんとやりましょう!
国保非加入なら長期保有でも毎年徹底してしゃぶるべし!
利率の前提で有利不利は変わって来ますが、特定口座で元本1万円を
①毎年金融課税5%で利確して、税引後受渡額で即再投資して運用する場合
②ストロングホールドで最後の年に税率20.315%(正確な検証のため復興税含む)で利確する場合
を比べて、ケース②の税引後受渡額がケース①を上回るのは何年後なのかを検証します!
利回り 3% 7% 10%
逆転年 152年後 95年後 50年後
①の税引後額 801,438円 821,548円 934,773円
②の税引後額 803,679円 823,063円 937,461円
ということで一目瞭然で勝負ありましたね!?
どう見てもストロングホールドの負けです!
年平均利回り10%超で見積もるのは現実的ではありませんが、利回り10%でも②ホールドが①毎年5%課税利確で少し細らせながら税引後再投資運用を上回るには50年掛かります。
やはり税率20%と5%の差は大きく、売らずに複利パワーで上回るには人生の長さが掛かってしまいます。
利回り20%でも27年後と試算されたので話になりません!
国保加入者なら毎年利確が確実有利とはならない
ところが、国保加入者だと毎年利確が確実有利とは言えなくなります。
上の試算前提で国保料10%と仮定してケース①の条件に付加して、
③毎年金融課税15%(住民税5%+国保10%)で利確して、税引後手残りで即再投資して運用する場合
とケース②:ホールドの損得を比べてみます。
利回り 3% 7% 10%
逆転年 28年後 13年後 10年後
③の税引後額 20,239円 21,199円 22,610円
②の税引後額 20,263円 21,234円 22,700円
ということで、先程のように一目瞭然どちらかの圧勝とはなりませんでした。
期待リターンの見積もり前提とホールド年数によって有利不利は変わって来ます。
ザックリとならば、10年未満の売却予定なら国保料込みでも毎年金融課税5%ゾーンを使って利確していく方がトクだとは言えそうです。(10年以上ならケースバイケース)
金融所得増税も前提なら国保込みでもしゃぶるべし?
でも、10年以上先の未来も金融所得税率が今と変わらないという前提には無理があります。
特定口座の利益を国保の算定対象に加えるという動きも含めて、第二の税金を含めた将来的な金融課税率をとても控えめに30%で見積もり比べます。
ケース②にこれを加味して、
ケース④:ストロングホールドで最後の年に税率30%(第二の税金も含み)で利確する場合
とケース③の損得を比べます。
(金融所得増税の際に住民税率も引き上げられた場合はケース③の条件変更も必要なのですが、いつから何%になるか・ならないのかも不明なため考慮せず)
利回り 3% 7% 10%
逆転年 70年後 31年後 23年後
③の税引後額 58,277円 59,997円 65,296円
④の税引後額 58,425円 60,016円 65,680円
ということで、一目瞭然で再度ほぼほぼホールドの完敗という結果になりました!
つまり、控えめに将来の金融所得課税30%という前提では国保加入者も、30年長期ホールドの含み益でも、金融課税5%ゾーンは毎年利確しながら徹底的にしゃぶり尽くした方がトクだということになります!
これは宗教ではなく裏切らない算数です!
(エクセルは計算を間違えないけど、それを使う人は間違える生き物なので鵜呑みにせず、私の計算結果が正しいかの検証は忘れずに!責任持たず!)
結論
年間所得132万円以下で金融課税5%ゾーンを使える人で国保非加入者なら、配当であれ譲渡所得であれ毎年徹底的にしゃぶり尽くす方がトク!
バイアンドホールド枠の長期保有でも含み益を毎年5%課税枠内で利確して再投資した方が最終的な手残り額も大きくなる。
とにかく徹底的にしゃぶり尽くすべし!
国保加入者なら、配当については国保料アップを考慮しても少しトクになるが、それによりマイナス面がある人は天秤に掛けて判断。
譲渡所得も考え方は配当と同じだが、長期保有の場合は10年程度なら5%課税枠内で利確して再投資した方がトクだが、10年超はケースバイケース。
しかしながら、将来的な金融増税を考慮した場合は30年超のホールドでもなければ毎年利確した方が最終的な手残りも大きくなると想定される。
よって、毎年の金融課税5%ゾーンは積極的に使っていくべき!
ということで、対象者で意思があれば完全なる自己責任において金融課税5%計画へGo!
補足:現・年金受給者もサラリーマンも引退後は使える?
現在の年金受給者も少なくない割合がこの技を使えると思います。
所得132万円以下なら普通に給料を貰っている現役サラリーマンには全く関係なく使えない話ですね。
でも、退職後に年金を貰える頃には使えるようになるかも知れない。
高給取りには(応じて受給厚生年金も増えるので)無理ですが、公的年金控除額110万円と住民税基礎控除43万円の計153万円(+他各種控除)内で年金が収まり他に収入がなければ、金融課税5%ゾーンを52万円分使えます。
現在の年金受給者は資産の取り崩し期に入り何十年先の損得を考える必要もなくなるので毎年の利確に目一杯使うのがベストですね。(国保料のアップには注意)
現役サラリーマンにとっては10年先の話になると税制も変わるでしょうし、目先でも年収の壁再引き上げや給付付き税額控除の議論の中で基礎控除もまたコロコロ変わりそうなので、あまり真剣に考えても無駄になり兼ねませんので、今回の話は参考程度で。

