2025年05月09日

世界恐慌に生まれたバフェットの退任は幸運なパクスアメリカーナ時代の終焉も暗示?

ウォーレン・バフェットがバークシャー・ハサウェイの株主総会でCEO退任の意向を表明しました。
もう94歳ですからね、稀代の投資家かつカリスマ経営者の頭と体が健康なうちに滞りなく次の体制に引き継いで行く為にもう先延ばしできない年齢だし、自然なタイミングでしょうね。

おそらく後世何百年と語り継がれる歴史的で伝説の投資家の行動や発言にリアルタイムで触れられたことは世界の一般投資家にとっても幸運だったことでしょう。

今回の株主総会で特に
「日本の商社は50年保有する」
「今後20年以内に大きな暴落が起こる」
という2つの発言が気になったので詳細を見てみました。

確かに日本の5大商社を評価しているようですが、この発言をバフェットがコカ・コーラ株のような永久保有銘柄と同一に考えていると受け取らない方が良いと思います。
そもそも確信を持った永久保有銘柄なら対象を1つか2つに絞るはずです。
でも、伊藤忠商事と三菱商事のどちらが優位かはわからないから日本の「商社」という業種を評価して5銘柄に分散している訳です。

バフェットがこのような投資方法を選択するのは珍しいと思いますが、わからないモノに投資しないという原則から、いや遠い国の銘柄ごとの評価までは「ちょっと何言っているかよくわからない」ので安全策を取ったということでしょう。
また、バークシャーの本業とビジネスモデルが似ている日本の商社と協業していくために大株主の立場を50年維持するという側面の方が大きいかも知れません。
決して日本の商社への投資で大きなキャピタルゲインを期待している訳ではなく、関連会社として強い関係を今後50年続けて行きたいというバークシャー社の意志が大きいように思います。

20年以内の暴落予言については、バークシャーが直近のトランプ関税ショックの株価下落時に投資したか?という質問の回答で触れられました。
簡単に要約すると、トランプショックの15%程度の下落など取るに足らない、バークシャー株は過去3回の異なる時期に短期間で50%下落した、確実に今後20年以内にも大暴落が起こるだろう。

文脈に沿って素直に受け取ると、過去にも3回バークシャーの株価が短期間に半減する暴落はあったのだから今後20年で1回は当たり前に大暴落するよ!
と言ったのであり、特定の事象を指したものでも預言でもなく、過去に繰り返された市場の暴落は今後も起こるし避けられないと言っただけと解釈できます。

しかしながら別の文脈では、米国の財政赤字は長期間の持続不可能であり、持続可能なのが2年か20年かはわからない
とも述べています。
この2つの発言を繋げると、今後20年以内に制御し切れなくなった米国の財政赤字により株式市場の大暴落が引き起こされ、それは不可避であると腹の中では考えていないとも言えません。
(無関係なら持続可能期間に何故20年を例示したのか?2年後はトランプ在任期間だから可能性も否定できず警鐘を鳴らすためにも例示したのでしょう。)

まあ基本的には市場の予想も言わない人なので、94歳が退任時に残した大暴落預言ではなく定期的に繰り返される大暴落は今後も同周期で起こるという趣旨の発言だと思います。

バフェットは今回の株主総会でも、自分の幸運は米国に生まれたことと述べ、今日生まれるとしても米国行きを交渉すると述べるほど米国の強さと優位性を信じて疑いませんが、本当に今後100年も過去100年と変わらずパクスアメリカーナが継続するのでしょうか?

世界恐慌翌年の1930年に証券会社を経営する父の元に生まれ、11歳で株を買い始めた株式投資の申し子。
まさに株式投資をする上で最高の時期に最高の国で最高の環境に恵まれ、かつ株式投資をするために生を与えらたような人物がバフェットであり、本人の才能と努力も加わり結果を出し続けました。

でも、このような神に愛されたような男の引き際は「最高の環境」も終焉となることを暗示しているようにも思えます。
バフェットに始まりバフェットに終わる=
世界恐慌1930年の米国が真っ暗な時期が米国繫栄のスタート地点となり、戦後世界の中心となり栄華を極めて、バフェット退任(or次の出来事)でパクスアメリカーナが終焉する・・。

そう思わせるのは米国が築き上げてきた戦後秩序・体制や信頼を次々と破壊して、よくわからないMAGA思想で米国を再興しようとするトランプ政権とバフェットの引き際が重なっていること。
バフェットの生まれた1930年に発動した米国の高関税政策が世界恐慌を悪化・長引かせる原因となりました。
今はトランプによる関税を中心とした米国自己中の政策が米国と世界を大不況に追いやりかねないと懸念されています。

歴史は繰り返すのかも知れないし、繰り返さなくても韻を踏むのかも知れないし、バフェットは引き際のタイミングまで時代的に超ラッキーだったということにもなるかも知れません!?

年寄りになってもコーラを飲みハンバーガーを食べるバフェットがまた米国に生まれたいと願うのは当たり前だし、彼の人間性・投資哲学・数々の名言格言はリスペクトしても、彼も聖人ではないしグローバルの視点は欠ける自国米国大好きな愛国者であり、米国外の世界には関心も低く、米国賞賛発言は世界を俯瞰した上での優位性分析ではなく、米国ラブラブでエモーショナルなバイアスも強いと見ておくのが無難だと思います。

バフェットはリーマンショック後の市場混乱を「経済的パールハーバー」と形容したり(いや米国内の問題で例えが明らかに不適切)、初来日が80歳を過ぎてからの2011年で商社に投資したのは更にその数年後です。
私は愛国者のバフェットが日本という国に良い印象がなくあまり好きでなかったから投資しなかったが、晩年にかつて真珠湾奇襲した国に仕事で仕方なく来日して感情面で印象も変わり、商社にも投資して協業できるようになったと見ています。
まあ良く言えば、人間臭い面も多分にあるのがバフェットだと思います。

さて、米国に恵まれた幸運の大投資家バフェットのフェードアウトは世界恐慌後から始まった米国覇権と繁栄のフェードアウトも暗示しているのでしょうか?
posted by 太助 at 11:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 全般共通 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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