昨年の5月16日に設定された「Tracers S&P500トップ10インデックス(米国株式)」が運用開始から1年を経過して情報も揃って来たので評価してみましょう。
【年に1度の銘柄入替】
トップ10銘柄の見直しが6月20日に行われた結果、イーライリリーが除外されて、テスラが組み入れられました。
何かと話題なのがテスラというよりイーロン・マスクですが、この入れ替えが吉となるか凶となるか?
インデックスなので恣意的に除外はできませんが(それなら個別株を買うべし)、スタートではテスラの構成比が5%程度なのでファンドの騰落率を振り回す規模ではありません。
バークシャーとJPモルガン以外の8銘柄はM7を含むIT企業となるので、このファンドもM7+α(=USトップ10)の様相を強めることにはなりますね。
【S&P500との騰落率比較】
乖離の生じがちなファンド立ち上げ初期1カ月強を除外できるので、6月末時点の1年パフォーマンスを「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」と比較してみます。
ファンド ベンチマーク
Slim米国 △2.3% △2.2%
Tracers TOP10 △2.2% △2.4%
TOP10ファンドを買うならS&P500を上回るパフォーマンスを期待したいところですが直近1年ではほぼ同等であり、ファンドとしては▲0.1%だけSlim米国を下回りました。
でも、ベンチマークは△0.2%上回っているので連動対象の指数としてはTOP10がS&P500を若干上回ったことになります。
【総経費率】
1年経過したので総経費率も判明しました。
第1期の運用報告書内で総経費率は0.15%で、内数としてその他費用は0.05%と記載されています。
しかし、ここには売買手数料と有価証券取引税が反映されていなので、費用明細を見ると
信託報酬 0.108%
その他費用 0.048%
売買委託手数料 0.03%
有価証券取引税 0.001%
合計 0.187%
としっかり記載されています。
これが高いのか安いのかわかりにくいので、参考までにSlim米国は
その他費用 0.007%
売買委託手数料 0.001%
なので、Slimの方が圧倒的低コストですがそれは当たり前。
純資産7兆円を越える7期目ファンドと純資産500億円程度の1期目ファンドを比べています。
1期目はコストが膨らみがち、かつ純資産規模(分母)も小さいと固定費の負担(%)も重くなります。
今後もコストでSlimを逆転することはないと思いますが、2期目以降はその他費用と売買手数料率の低下は期待できます。
1期目で信託報酬以外に0.1%以下のコスト負担であれば問題ないと判断して良いと思います。
【1期目のベンチマーク差異が小さくない劣後】
運用報告書では1期目にベンチマークを▲1.1%下回ったマイナス要因として「カストディ・フィーや売買手数料などの諸費用を支払ったこと」と説明されていますが、これはゴマカシと思われ、前述の通りに総経費は0.2%未満に収まっています。
つまり、▲0.9%以上の差異は説明がなされていません。
あまり積極的には説明したくないものと思われますが、結論から言えば投資家の側もあまり心配する必要はないかと?
前述の通りに直近1年のベンチマークとの乖離は▲0.2%(=ファンド騰落△2.2%-指数騰落△2.4%)でした。
この差は総経費0.2%分の差で説明できるので直近1年間では問題ないことになります。
つまり、残り▲0.9%の乖離は昨年6月30日より前に生じたことになり、おそらくファンド立ち上げ当初(5月16日直後頃)の躓きと推測できます。
何故生じたかの説明は避けていますが、他ファンドでもありがちな事象であり、ベンチマークとの乖離は直近1年で▲0.2%、直近6カ月では差異0%まで改善しているので、今後も頻発するような乖離ではないと考えて良さそうです。
ということで、私の評価は
ファンド立ち上げ当初に1%劣後する乖離は見られたものの、その後は順調に運用され、その他費用も許容範囲で今後の低減も期待でき、大きな問題は見当たらないと考えます。
連動指数自体が直近1年でS&P500とほぼ同等のパフォーマンスであることはファンド評価と無関係ですからね。
私の予想では1年で純資産総額1千億円以上は集めるファンドになるかと思いましたが、500億円程度に留まり存続を心配する必要は全くないものの、そこまで人気化するファンドにはなっていません。
どちらかと言えば10銘柄に投資するだけの変わり種ファンドですが人気ファンドFANG+のような高コストでもなく充分に低廉なので、一年経過して様子見していた人達が買い始めて純資産が伸びていくかにも注目です。
Tracers S&P500トップ10インデックスにテスラ入りと運用開始1年後の評価
