中東民主化デモがイラン・サウジアラビアに拡大するとの懸念から原油価格が上昇して、それを嫌気してNYダウも昨日は下落しました。
しかし、その前日にダウが上昇したのは、ウォーレン・バフェット氏が毎年恒例のバークシャー・ハサウェイ社の「株主への手紙」の中で、「引き金を引く指がうずうずしている」「大型買収の銃に再び弾丸を込めた」(ブルームバーグ)と新たな大型買収を匂わせたことを好感したことが一因のようです。
では、バフェット氏がこの手紙の中でどんな事を言っているのか拾ってみましょう。
「資金は常にチャンスの方に流れていく。米国には数多くのチャンスがある」
「悲観的な予測ばかりする人は、極めて重要な点、確かな点を見逃している。人類はまだまだ潜在能力を使い切っていない。潜在能力を解き放つ米国のシステムは健在であり有効だ」
「米国の全盛期が待っている」(ロイター)
「住宅市場の回復は恐らく約1年以内に始まるだろう」
「いずれにせよ、ある時点でそうなるのは間違いない」(ブルームバーグ)
原文を読んでいませんし断片的なので額面通り受け取って良いのかわかりませんが、私もどちらかと言えば米国に対して悲観的な予想に立つ側ですが、「人類はまだ潜在能力を使い切っていない」ことも「潜在能力を解き放つ米国のシステムは健在」であることも賛同します。
しかしながら、独創性には劣るがモノマネして安くて良いモノを作ってしまう経済の強さもかつて日本が証明し、そのアジア的(?)強さは今後、韓国・中国等が見せ付けるだろうと思います。
また、氏の発言が少し無理して米国を楽観視していると思わせる点は、住宅市場が1年以内に回復し始めると強気の予想をしつつも、「ある時点でそうなる」と付け加え弱気も垣間見えること。
前者と後者では雲泥の差があり、後者は少なくとも日本のように20年も低迷し続けることはない程度の意味にも取れる。
バフェット氏の先を見通す力を疑う訳ではないが、米国の将来を語る時にはバイアスが掛かっているようにも思える。
金融危機を米国にとって経済的なパールハーバー(真珠湾)と表現してしまうように、とても愛国心の強い人だと思います。
(米国が勝手にこけた危機であり、緊急事態と言いたいだけで日本に対しても悪気はなかったのだと思いますが・・。)
世界恐慌の直後に生まれたバフェット氏も既に80歳を越えていますが、まさに20世紀のパックス・アメリカーナの時代に米国株への投資だけで大成功を収めた人です。
超大国でない米国など想像できないし、栄光の時代にどっぷり浸かった日本のお年寄りが根拠もなく「日本は復活する」と過剰に自分の国や国民を持ち上げてしまうのと似ている面もあるかも知れません?
私は逆にバフェット氏という天才の存在が、世界恐慌の直後という米国のどん底で生まれ数々の伝説を残し、米国の栄光の時代と彼の人生が重なっているようで、80年スパンで金融危機と共に米国の1つの時代が終わったように思えてならないのですが・・?
本当に氏が言うようにこれから「米国の全盛期が待っている」のだろうか?
私には長嶋茂雄が引退の時に言った「我が巨人軍は永久に不滅です」という言葉とバフェット氏の言葉が重なります!?
巨人は今も強いチームとして存在しているけど、不滅の9連覇という全盛期は長嶋引退と共に終わり、もう戻って来ない・・?
強過ぎる巨人と天才長嶋の引退、超大国米国と天才投資家バフェットの人生・・。
仮に全盛期がやってきても今度は見ることができないかもしれないバフェット氏の発言も、自分の潜在能力を引き出してくれた大好きな米国に対する1人の天才の恩返し・励まし・鼓舞・プライドの類ではないかと感じます・・。
(私はバフェット氏を尊敬していますが、信者ではありませんので。)
[←参考になりましたら一押し。m(._.)m]
コメント
私も彼のこの発言には同意できません。
ただバフェット氏クラスの投資家の発言となるとそれが完全なポジショントークであっても市場を動かしてしまうのかもしれません。
パックス・アメリカーナの時代、長期投資という切り口からは大成功をしている方ですが、ある意味ではすでに「過去の人」になりつつある気がします。
自分がそれを感じたのはかなり前にGM株が24ドル近辺だった時に猛烈な買い推奨をし、18ドルに落ちるとメディアを使って買いを煽った時でした。
その後GM株は良いとこなしで今や誰でも知っている結果になった訳ですが、当時彼が買いを煽った理由は明らかに彼自身のイデオロギーによるものでした。
投資をする者にとって「イデオロギーを現実に優先させる」ことほど危険なことはないのではないでしょうか。
中東情勢などにより現在のアメリカの株式市場を取り巻く状況が悪化しつつある中でのこの発言は「株価をさらに吊り上げたい」向きのポジショントークと見る人も多いと思います。
バフェット氏は基本的に米国株の投資家であって、外国株や債券でも実績はありますが、ソロスやロジャーズのように世界を俯瞰した上で米国を客観的に見ているかというと、そうではないように思います。
日本株に一切投資したことがないように、よく知らないもの(もしかしたらあまり好きではないもの)には近付かないので、好き嫌いという要素は氏の投資判断に影響していると思います。